偽陽性、偽陰性と検査の精度 前編  ~「陰性=安心」は嘘だった!?~

2020/5/3

初めまして、東京医科歯科大学の やまさん です。
SARS-CoV-2(以降、新型コロナウイルス)の感染が広まり全国で外出自粛が求められている中、みなさんは「おうち時間」をいかがお過ごしでしょうか。私は大学の授業がオンラインになりました。形はどうであれ、授業を行ってくれてありがたいと思う今日この頃です。

さて、新型コロナウイルスに関する報道の中でも、著名人の入退院についてはとりわけ取り上げられることが多いですね。その中で

「PCR検査で2回連続陰性と出たので退院しました」

という言葉を耳にしたことがあるかと思います。なぜ2回もPCR検査をしなければならないのでしょうか。みなさん、考えたことはありますか?

実は、検査は完璧なものではありません。仮に検査で陰性と出ても、それが必ずしもウイルスを保有していないと断言することにはつながらないのです。つまり、本当は新型コロナウイルスがまだ体内にいるのに陰性と出ているだけ、という可能性が否定できないのです。ちなみに、これを偽陰性といいます。この偽陰性が出てしまう確率をなるべく低くするために、PCR検査で2回陰性を確認してから退院するのです。

また、PCR検査に限らず検査に関する報道でよく「精度」という言葉が用いられますが、検査の精度は感度特異度という2つの指標で決まります。感度は、実際に病気を抱えている人に対して陽性という検査結果を出すことのできる確率のことです。例えば、ウイルスの保菌者100人に対して検査を行い、85人に「陽性」と出たら、その検査の感度は85%であるということができます。特異度は、実際には病気を抱えていない人に対して陰性という検査結果を出すことのできる確率のことです。例えば、ウイルスの保菌者ではない人100人に対して検査を行い、90人に「陰性」と出たら、その検査の特異度は90%であるといえます。

残念ながら、感度・特異度についてまで触れる報道はあまり多くありません。その結果、「陰性がでたから安心です!」と思ってしまう人は少なくありません。特異度が100%でない限り、陰性だからといって保菌者ではないと言い切ることはできません。そして、基本的に何をするにしてもヒューマンエラーは一定の確率で起こりうるため、検査の特異度を100%と言い切るのは難しいのです。

また、感度や特異度について考えることで「陽性」結果が出たときにあなたが本当に病気である確率がわかります。このような考え方をかっこよく言うとベイズ推定といいますが、実際は簡単な条件付き確率なので中編から一緒に考えていきましょう。

それでは中編も、お楽しみに♪

今回のまとめ
感度:病気の人に対して検査で陽性と判定できる確率
特異度:病気ではない人に対して検査で陰性と判定できる確率
偽陽性:本当は病気ではないのに検査で陽性と判定されること
偽陰性:本当は病気なのに検査で陰性と判定されること

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