なぜ僕は全学の部活に入ったのか ~全学の部活に入るか迷っている医学生に向けて~

2020/4/25

僕は慶應義塾大学の體育會ハンドボール部に所属している、A.K.という。體育會とは全塾の運動部、つまり文系学部の学生が所属する運動部のことである。
全塾は医学部体育会と様々なことが違う。そこでの体験、文系学部生の特徴、そして、なぜわざわざ全塾に入ったのか、についてここでお伝え出来たらと思う。

まず全塾の体育会について少しご紹介する。
「活動頻度」について、おそらく医学部体育会との1番の違いは活動日数だろう。全塾の部活は週6日練習する。練習時間帯、時間の長さは部によって異なるが、僕が入っているハンドボール部は基本的に18時から21時までの3時間練習する。木曜日以外は毎日練習があるため、平日は授業が終わったらすぐにトレーニングジムに行き、その後練習場に向かうというルーティンだ。

この活動日数に関しては、実際に過ごしていて「時間的には意外といける」と感じた。これは医学部において1年生は教養科目期間であり、比較的負担が少ない学年だからだろう。

次に「推薦入学者」について。全塾の部活にはスポーツ推薦で入学した選手がいる。彼らの多くは高校時に全国大会で活躍し、大学でも各部活で中心的な役割を担っている。
ハンドボール部の場合、スターティングメンバー7人のうち3人がスポーツ推薦者で、当然ながら彼らがチームの中心となっている。また、推薦でなく入部した部員も大学で競技を続けるだけあって、全体としてレベルが高く、ポジション争いは非常に熾烈である。
雰囲気も厳しい。私語厳禁はもちろん、ミスに対して「いい加減にしろ」「下手くそすぎる」などといった辛辣な言葉が当たり前のように降りかかってくる。僕自身、今でこそなんとか受け流すようになってきたが、入部当初は精神的に堪え、ミスをするのが怖かった。
ここで少し、文系学生の意識、日常について書こうと思う。文系には経済学部、法学部、商学部、環境情報学部など多様な学部があるのだが、彼らが取る授業のうち、必修科目を除いた半数以上の科目は「一般教養科目」として全文系学部共通である。そして多くの学生は一般教養科目の中で楽に単位が取れる、いわゆる「楽単」を履修することで、勉学に追われることの少ない、比較的余裕のある日々を過ごしている。そのため、1日の予定が部活しかないこともあるという。しかし彼らも、3年生の後半から就職活動が始まると、かなり忙しくなる。実際に就活中の部活の先輩は朝から練習前まで休むことなく就活をしていて、そのスケジュールは解剖期にも引けを取らないほどと考えられる。

ではどうして医体ではなく、全塾の体育会に入ったのか。

入学前、僕は医体のハンドボール部に入ろうと思っており、全塾に入ることは全く考えていなかった。新歓期間で医学部体育会を回るなかで、新しくできた友達と楽しい日々を送らせてもらい、またそこで知り合った先輩方にも本当にお世話になった。しかし、そんな充実した日々を送る傍らで『高校の時よりも楽な道を選ぶべきだろうか」という思いが心の中で生まれていた。「確かに医学部体育会の先輩は優しくて、人として尊敬できる。勉強も大変だろうから、バランス良く体を動かせる医学部体育会に入るのが自然だ。楽しい雰囲気でスポーツをすることも一つだけど、でもやるなら厳しい環境でやりたい。みんな医学部体育会に入るからといって、僕もそこに入ることを決められた訳じゃない。」

週6日の練習は高校の時もそうだった。レベルの高い選手たちの中でやっていけるか不安に思うこともあったが、それでも厳しい環境に割って入り、ポジションを掴みたい。その気持ちが不安を押しやった。このような経緯で全塾に入部したが、そこから日々過ごしていくにつれ、目標も大きくなっている。

進路相談でよく「目の前に2本の道があるとして、1本は平坦で楽な道、もう1本は険しい茨の道。あなたはどちらを選ぶ?」という問いかけを耳にする。でも僕はこの問いには語弊があると思う。この問いに対してなら、僕は迷わず前者を選ぶ。でももし「1本は平原にどこまでも続く平坦な楽な道、もう1本は山の頂上に続く茨の道。あなたはどちらの道を選ぶ?」であれば納得がいく。茨の道を抜けると山の頂上に辿り着く。つまり厳しいものには、厳しくある理由がある。では僕にとって山の頂上にあたるのは何か。僕には残り3年間の中で、3つの目標がある。
まずひとつめは、自分がレギュラーになって試合で活躍すること。ふたつめは「良いチーム」「勝つチーム」について日々学び、考え、4年時に主将になりチームを支える存在になること。もうひとつは、学業的な理由で運動部に入ることを諦めてほしくない、もっと言えば、「やりたい【何かがあるんだけど、自分には何かがあるから今はやらない。」という考え方を否定し、人の挑戦を後押しできる人になること。そのためにまずは、医学部や文系学部の後輩に対して、勉学と全塾体育会の両立が可能であるということを背中で見せていきたいと思う。
進んでいった先にあるものが自分にとって価値のあるもの、自分を進化させてくれるものであるならば、茨道であったとしても怯まずに頭から突っ込んで行くべきだ。

 

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