一年生で心電図検定に挑戦して

2020/5/16

はじめに

心電図検定というものを知っているだろうか。この検定は日本不整脈心電学会が主催して毎年8月に東京、大阪、福岡で開催されている。循環器専門医レベルの1級から、医学生レベルの4級まで様々な級がある。この4級を受験した経緯と、どうやって入学後半年足らずで合格できたか、そして受験しての感想を話していきたいと思う。

勉強会参加~合格発表

まず、心電図検定の存在を知ったのは、5月下旬だった。大学の生活にも慣れてきて何か始めようかと思っていたころ、心電図検定に向けた勉強会についての学内メールが届いた。講義は教養ばかりで、医学生らしいことをやってみたいと、勉強会に参加することにした。8月まで3ヶ月ほどしかなく、そのときは検定を来年に受験しようと考えた。

6月に勉強会が開始。大学受験で生物選択だったとはいえ、知っていたのは血液が大静脈→右心房→…→左心室→大動脈と流れることくらい。最初は心電図の基本波形についてのDVDを観させてもらうものの、全く分からない。波形にはP波からT波まであることだけは理解できた。

勉強会の後、8月の検定で3、4級を受けるように、勉強会を開いてくださった先生から勧められた。僕はさすがに間に合わないと思ったが、最終的に先生の押しに負けて、4級だけ受験すると妥協した。

2回目以降の勉強会では、疾患ごとの心電図異常所見を解説してもらった。「右軸偏位ではⅠ、aVL誘導でrS型となっています」と言われても、異常のある誘導と位置をすぐに見つけられず、ひたすらメモする始末。それでも、毎週2時間ほどの勉強会と復習をするうちに、少しずつ波形と疾患が一致するようになってきた。

東医体が終わってから検定までの約10日間で何とか詰め込んで、試験当日を迎えた。試験は70分50問と時間の余裕はあまりない。全部選択問題なので、悩む問題は一旦保留にして解き進めたが、最終的に10問ほど答えに自信がなかった。問題は回収されてしまうので、解答確認をできず不安だった。

ここで心電図検定について少し説明させてもらう。どうやら、前年までは1~3級までしかなく、4級は今年初めて開設された級のようだった。そのため、合格率がどのくらいになるか分からなかったが、1~3級の例年の合格率から推測すると8割ほどで、不合格は少し恥ずかしい。さらに千葉大からは毎年のように学生が受験していたようだが、不合格になった人はいなさそう。もし不合格になったらと想像するだけで一層不安になった。

試験から一か月後に合格発表があった。結果はAランク(50問中45問以上正解)での合格だった。恐らく最年少で、しかも高得点で合格できたのは、とても嬉しかった。全く医学的知識がなくてもできたのは、熱心な先生がいるという恵まれた環境と、自主的に勉強しようと思えたからだと思う。

心電図検定の受験を通して

検定の合格に特別の医学的知識はいらなかった。本来はそれぞれの疾患でどの部位の心機能が低下するかなどを詳しく理解しておく方が、応用も利いて役に立つかもしれない。しかし、勉強期間が短かったため、疾患名と心電図異常の一致させることに徹底した。段々と覚えてくると、正常な心電図波形との間違い探しをしている感覚で楽しみながら勉強できた。

結局、この検定に合格するためによく分からない疾患とその心電図異常を覚えるという、付け焼き刃の勉強をして、身に付いた知識は多くなかったと思う。今のところ、心電図を学んだことが、普段の講義に役に立った試しがない。そして、今後もどれほど意味があるかも分からない。

それでも、今回の心電図の勉強をして得られたものは十分あったと思う。

一つ目は、心電図という新しいものに興味を持ったこと。先ほど書いたように、最初から心電図を勉強したいと強く思っていた訳ではなく、何か新しくやりたいという程度のつもりだった。心臓病と言えば心筋梗塞くらいしか知らなかったが、教えていただくにつれて、不整脈源性右室心筋症など初めて聞く病名も多々あり、知っている心疾患も増えた。心電図波形を見て、それらの新鮮な響きの病名を当てることは、思っていたよりも面白いと感じられた。

二つ目は、短い準備期間でも、頑張れば何とかできるという自信を持てるようになったこと。心電図を学び始めたばかりのときは無理だと思っていたことが満足できる結果に結びついたことが、さらに挑戦するやる気に繋がると思う。

三つ目は、勉強会に参加することで、活動する場が広がったこと。これが最も大きなメリットだったと思う。心電図の勉強だけなら、参考書も多く出版されていて、基本さえ分かれば自分でもできる。実際、独学で3級に受かった先輩もいた。資格を取るためだけならそれでも十分だろう。しかし、面倒で敷居が高いと感じたとしても、他の人との繋がりをつくるためにグループに参加する意義は大きいと思う。勉強会に参加したことで、先生や、同じ勉強会にする学生との繋がりができ、学会の学生枠で発表させていただくこともできた。

このような勉強会やセミナーなどに参加するのは、意識が高い人ばかりというイメージがあり、少し興味があったとしてもためらいがちになるかもしれない。しかし、そこで一歩踏み出すことで、自分ひとりではできなかったことが可能になると思う。

僕自身もそこまで強い意思があって参加したのではない。そして、学会発表といった貴重な経験もできたのは、良い指導医の先生がいたからに他ならない。振り返ってみれば、自分だけでできたことはほんの少ししかなかった。僕が一歩を踏み出すことができたきっかけは、心電図の勉強会に参加したことである。

最後に

素直に言うと、絶対に落ちてはならないというプレッシャーがあった。勉強会は僕が参加する前から開かれていたようで、遅れを取っている僕のために先生が一対一で教えてくださることもあった。このように熱心に教えてもらえる恵まれた環境だったのにもかかわらず不合格だったら、先生に顔向けできない怖さから頑張れた。合格できたときは嬉しさよりもホッとしたというのが本音である。

今回の心電図検定の受験では、心電図がどのような異常を捉えているかを理解するという本来の目的から外れてしまっていたかもしれない。しかし、躊躇しながらも受験することで、入学当初には想像できなかった様々なことを経験できて、正解だったと思う。

 

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1件のコメント

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